39年目の“ビートル” ♯06
D-DAYS =EP.1=
「やっぱり……安請け合いしすぎたかな(´・_・`)」
既に深夜1時半を過ぎた、そろそろ就寝しなければ、朝6時過ぎには起きて普通に登校しなければならないのだが……。
今夜も冷える……炬燵の卓上には3つの作りかけのキット。切り刻まれたに等しい部品の山で……もう、カオス極まりない。
安請け合いし過ぎた……と言うより「気負い過ぎた」というのが正解か。
『刑部』が、その話を持ってきたのは年が明けてすぐの事だった。
『典厩』さんが、アレと、1/35のダイビングビートルと、アレをなんとかスクラッチ。この3つを頼みたい、と。
『刑部』が言うには、
「sa-toshi君、今回がデビューだから、“華”を持たせてくれようとしているんじゃない?」
確かに、それはそうなんだろう。
こちらもそれは解っているから、快く引き受けた訳なんだが……。
正直、こんなにキツいことになるとは思ってもみなかった。
学区外の高校へは、電車を乗り換え更にバス、とけっこうな登校時間がかかる。朝7時には駅のホームに到着がルーチン。帰宅は急いでも4時前だ。
そこからずっと、夕食以外は作業にかかりっきりで、毎日深夜2時近くまで。
それがもう何日続いたか……。
窓を開けて、煙草を取り出して外へ体を乗り出しながら一服。
本当ーっに……もう疲れた。
川崎市某所商店街にある、中学時代から行きつけの『模型店М』。
そこによく集まるモデラー仲間の、比較的若い世代で、『雑誌D』に模型ライターとして参加する。
この驚くべき出来事は昨年夏から始まっている。が、自分は今回が初参加だった。
メンバーは少し年長の『典厩』さん、『金吾』さん。『刑部』、『兵部』と自分の5人。
高校生モデラーのアルバイトとしては、ゼニ金どうこう以上の価値がある機会だった。
『雑誌D』は、たとえば『雑誌J』のようにメジャーとは言い難いけれど、『CAD』や『A88』でプラモデル業界に参画した、あの会社の市場戦略の一環として、それなりに注目されている。
そこに自分の作品が載る。あまつさえ製作記事も書かせて貰えるかも知れない、いや、たぶんあるだろう。
……そんなチャンスは、そうそうあるものじゃあない。
自分の作った完成品を雑誌に掲載してもらうなど、普通は夢物語でしかない。
何よりも、完成品を写真撮影しての投稿っていうのが敷居が高すぎる。
一眼レフに接写レンズ。簡素とはいえ照明器具だって必要なのだから、それらの機材の価格を考えれば……到底自分には無理だ。手が届かない。
『模型店М』のショーウインドーに飾ってある自分の完成品は、通ってくる小中学生達にはそれなりに賞賛されているけれど、所詮はその程度の話だった。
それが今回の降ってきた話だ。気負わないほうが無理ってもんだ。
『SB』の『О氏』や『K氏』、『MAX・W氏』とまではいかなくとも、自分にだって……と、珍しく自己顕示欲も疼いてくる。
もともと『刑部』と『兵部』とは中学時代の同窓で、『模型店М』の常連仲間だった。
2人は前回号で一度製作を経験済みだが、自分は今回が初挑戦だ。新宿の喫茶店での打ち合わせ、西武沿線での編集部での打ち合わせを経て、これ以上ないってぐらい気負っていた。
……それが、このザマだ。
3週間かそこらで全てを仕上げるっていうのは、最初の数日が終わったところで「無理だ」と解った。
しかし、今更それは口には出来ない。とにかく進めてみるしかない。
1/35のダイビングビートルは、
・とにかく短足なのを何とかする
・脚のスワンピークラッグを可動式にする
・電飾してカメラとライトを光らせる(これは編集部からの要望だ)
この3つの改造を施そうと考えていた。電飾の関係上、電池はボディ内部に収めるため、コクピットは作らないで済むというずるい計算もある。
足は切り刻まないと「延長」は無理。
Pカッターでケガキにケガキ、切断すると、プラバンを重ねて腿部分を延長していく。
接着剤はすぐには乾燥しない、ひと工程進めれば翌日までそこに手をつけることが出来ない。
他の部分の作業をするしかないのだが、その点では「3つを同時に製作する」というのは適していた。
だが、いかんせん作業の全体量が多過ぎるのだ。
延長した腿部分と組み合わせて脚だけで立たせてみる。
「……とりあえずは、大丈夫かな。後は……スワンピークラッグか」
続きは明日にするしかないが……カレンダーに眼を向けると、否応なく赤い丸印がプレッシャーをかけてくる。
1984年1月。とある深夜。16歳の冬の事だった。
“ビートル”の続きです。

足首の関節部分。これをゼリー状瞬着でガチガチに固めました。

今度は膝関節です。ポリキャップとプラバンで、精度としてはかなり問題がありそうなモノをでっち上げ。腿部分に接着。

それを覆うようにプラバンを接着。ざっと整形して、

エポキシパテを盛っておきます。

足首の上端をカットし、ポリキャップを瞬着で固定。

更にエポキシパテを充填して固定しています。いつも通りの手順。

まだ、つめていかない部分はあるものの、脚については概ね全体像が見えてきました( `ー´)。
続きます。
「やっぱり……安請け合いしすぎたかな(´・_・`)」
既に深夜1時半を過ぎた、そろそろ就寝しなければ、朝6時過ぎには起きて普通に登校しなければならないのだが……。
今夜も冷える……炬燵の卓上には3つの作りかけのキット。切り刻まれたに等しい部品の山で……もう、カオス極まりない。
安請け合いし過ぎた……と言うより「気負い過ぎた」というのが正解か。
『刑部』が、その話を持ってきたのは年が明けてすぐの事だった。
『典厩』さんが、アレと、1/35のダイビングビートルと、アレをなんとかスクラッチ。この3つを頼みたい、と。
『刑部』が言うには、
「sa-toshi君、今回がデビューだから、“華”を持たせてくれようとしているんじゃない?」
確かに、それはそうなんだろう。
こちらもそれは解っているから、快く引き受けた訳なんだが……。
正直、こんなにキツいことになるとは思ってもみなかった。
学区外の高校へは、電車を乗り換え更にバス、とけっこうな登校時間がかかる。朝7時には駅のホームに到着がルーチン。帰宅は急いでも4時前だ。
そこからずっと、夕食以外は作業にかかりっきりで、毎日深夜2時近くまで。
それがもう何日続いたか……。
窓を開けて、煙草を取り出して外へ体を乗り出しながら一服。
本当ーっに……もう疲れた。
川崎市某所商店街にある、中学時代から行きつけの『模型店М』。
そこによく集まるモデラー仲間の、比較的若い世代で、『雑誌D』に模型ライターとして参加する。
この驚くべき出来事は昨年夏から始まっている。が、自分は今回が初参加だった。
メンバーは少し年長の『典厩』さん、『金吾』さん。『刑部』、『兵部』と自分の5人。
高校生モデラーのアルバイトとしては、ゼニ金どうこう以上の価値がある機会だった。
『雑誌D』は、たとえば『雑誌J』のようにメジャーとは言い難いけれど、『CAD』や『A88』でプラモデル業界に参画した、あの会社の市場戦略の一環として、それなりに注目されている。
そこに自分の作品が載る。あまつさえ製作記事も書かせて貰えるかも知れない、いや、たぶんあるだろう。
……そんなチャンスは、そうそうあるものじゃあない。
自分の作った完成品を雑誌に掲載してもらうなど、普通は夢物語でしかない。
何よりも、完成品を写真撮影しての投稿っていうのが敷居が高すぎる。
一眼レフに接写レンズ。簡素とはいえ照明器具だって必要なのだから、それらの機材の価格を考えれば……到底自分には無理だ。手が届かない。
『模型店М』のショーウインドーに飾ってある自分の完成品は、通ってくる小中学生達にはそれなりに賞賛されているけれど、所詮はその程度の話だった。
それが今回の降ってきた話だ。気負わないほうが無理ってもんだ。
『SB』の『О氏』や『K氏』、『MAX・W氏』とまではいかなくとも、自分にだって……と、珍しく自己顕示欲も疼いてくる。
もともと『刑部』と『兵部』とは中学時代の同窓で、『模型店М』の常連仲間だった。
2人は前回号で一度製作を経験済みだが、自分は今回が初挑戦だ。新宿の喫茶店での打ち合わせ、西武沿線での編集部での打ち合わせを経て、これ以上ないってぐらい気負っていた。
……それが、このザマだ。
3週間かそこらで全てを仕上げるっていうのは、最初の数日が終わったところで「無理だ」と解った。
しかし、今更それは口には出来ない。とにかく進めてみるしかない。
1/35のダイビングビートルは、
・とにかく短足なのを何とかする
・脚のスワンピークラッグを可動式にする
・電飾してカメラとライトを光らせる(これは編集部からの要望だ)
この3つの改造を施そうと考えていた。電飾の関係上、電池はボディ内部に収めるため、コクピットは作らないで済むというずるい計算もある。
足は切り刻まないと「延長」は無理。
Pカッターでケガキにケガキ、切断すると、プラバンを重ねて腿部分を延長していく。
接着剤はすぐには乾燥しない、ひと工程進めれば翌日までそこに手をつけることが出来ない。
他の部分の作業をするしかないのだが、その点では「3つを同時に製作する」というのは適していた。
だが、いかんせん作業の全体量が多過ぎるのだ。
延長した腿部分と組み合わせて脚だけで立たせてみる。
「……とりあえずは、大丈夫かな。後は……スワンピークラッグか」
続きは明日にするしかないが……カレンダーに眼を向けると、否応なく赤い丸印がプレッシャーをかけてくる。
1984年1月。とある深夜。16歳の冬の事だった。
“ビートル”の続きです。

足首の関節部分。これをゼリー状瞬着でガチガチに固めました。

今度は膝関節です。ポリキャップとプラバンで、精度としてはかなり問題がありそうなモノをでっち上げ。腿部分に接着。

それを覆うようにプラバンを接着。ざっと整形して、

エポキシパテを盛っておきます。

足首の上端をカットし、ポリキャップを瞬着で固定。

更にエポキシパテを充填して固定しています。いつも通りの手順。

まだ、つめていかない部分はあるものの、脚については概ね全体像が見えてきました( `ー´)。
続きます。